696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第5 さんきゅーね

ススムとお母さんは台湾で出会った

いや ススムにとっては奥さん

バカが走る と よく言われるほどの猪突猛進 ススムだけにw

まぁ 単なる負けず嫌いでシャカリキな男だった

兎に角 外に飛び出したくて 言葉もままならないままこの国に着いた

ほとんど勢いだけで渡り歩き 明日は見えないが 職を得た

 

社内の別フロア

いつも高いヒールでコツコツと背筋を伸ばし コツコツと直向きに仕事をするその女性にススムは一目惚れして もちろん突っ走った

いや 突っ走るも何もなく 突然映画に誘った 

直接やりとりする間柄でもない ただの同僚だったのに 

応えは 「イイヨ」だった 『日本語しゃべれるのか』と思った。

 

せわしなく目まぐるしいこの街で 毅然としながらも柔らかな雰囲気を崩さない彼女に

ススムは 日本 を感じた

他の同僚も「彼女はどんな時も涙を見せない男らしい子さ」と笑っていた

 

依依(イーイ)という名前を知った時も腑に落ちたものだった。 

 

誘いに応じてくれた時の「イイヨ」は、名前訊かれた と思ったのかもしれない…が、

ススムだけに前向きなススムは、貰った応えを自分勝手に都合よく変換した事には気づいていない。

 

依依 という名には しなやか という意味がある 柳の様にしなやかで優しく強い。

(男らしい というよりは 大和撫子だよな)とススムは思った。 

 

 

 

2人で歩き出した。

日本で。

命を授かったから。

依依が日本での生活を望んだから。

 

空気の澄んだ 田んぼばかりの町で

すくすくと育つ娘を溺愛したのに

突然 不治の病が僅か10歳の娘に死を運んできた

 

神に祈るしかないところまで 四方八方に手を尽くし

自分の命と魂を 仏でも悪魔でも誰にでも売り渡して 娘を助けて欲しかった

 

 

ある日 ススムの泣き腫らした顔に気付いた娘は 父にか細い声で言った

「おとうさん わたしはもうすぐ生まれかわるから ちゃんと見ててね わたしは今のこと 少し忘れてるだろうから ちゃんと気づいてね そしたら また お父さんとお母さんの子になれるんだよ わたしを見つけたらちゃんとにこにこしてよね ほら 泣かないで そう その顔  さんきゅーね  おとうさん。。」

 

ススムはこの日を最後に嬉し泣きの以外の涙は捨てた

この日 真弥は旅立った。

 

 

その日から3年後、

児童養護施設に居る子の年齢も性別も無条件で里親なろうと決心した二人は、

マヤに出会えたのだった。

ススムは泣いた。

 

 

 

真弥は 薄れる意識で、お母さんにも話をしていた。

小さくてかわいいシロクマが 枕もとでささやいてくれたのだそうだ

「真弥ちゃんは元気な女の子になって またみんなと一緒にくらせるよ だから 心配しないでね…」と。

依依は、病魔に苦しむ我が身よりも母の心を癒そうとする娘の思い遣りを全て受け止めて、その優しい物話を穏やかに身につけた。

苦痛の中、奇跡の様な美しい笑顔を見せてくれた真弥。

そんな娘の心を少しでも安らかに導いたのは、「病室で寂しくない様に」と、依依がプレゼントしたシロクマの縫いぐるみだったのかもしれない…。

 

 

そして 二人は、

マヤに出会った。

依依も泣いた。

 

 

 

 

 

 

 

どぅしゃ