696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第 23 ヴェチェツォーン

御守りにしてはデカすぎて

護身用グッズにしては非力すぎ

コンピューターの便利さとは違うけれど

集めた情報をつらつら思考する時にはパチパチと寄り添ってくれるので連れて行く。

 

ソロバン。

 

カーキ色のリュックサックに、下着の替えとアメニティ少々 ニベアとか…。

洋服なんてほとんど着の身着のまま。

でも、心配性だから 薬はしっかり。筆記具やサバイバル用具なんかの小物もどっさり。

 

それと、ソロバン。

 

 

わたしの営む ”Albaソロバン塾” は、ずっと通ってくれている生徒が運営してくれる事になった。

わたしが 旅に出る と決めたのを知ったその子は、直ぐに「私に任せてください」と提案してくれた…とても嬉しかった。

光熱費なんかも含めて、全て任せることにした。

他の生徒さん達も快く応援してくれたので もちろん、塾を閉めるのも自由。

 

一人残る母は、相変わらず元気でクルクルパーさんなので心配なし。

友達もムチョ多いし、仕事もムチョムチョ楽しそうだし、元々しょっちゅう家に居ないし。

 

 

 

 

あの日、

気軽で 孤独で 少し幸せで 感謝の足りてない 曇りの日。 

行きつけの飲み屋で ムチョ…いや ムイララ(超普通)なのに、楽しい人に会った。

白衣を着たおいちゃんとおばちゃんが黙々と料理を作る居酒屋さん。

そんな店には珍しい外人さん…だけど、身なりは平凡で、違和感はないかな。

訊けばドイツ人という。

いや、お国を訊ねた訳じゃないんだけど 話の流れで教えてくれた。

 

彼の話は何となく古い童話みたいで興味深かった。明るい語り方ではなかったけど、

身の上を、躊躇せず訥々と、物語を思い出す様に聴かせてくれて、楽しかった。

 

(こんなに地味でおもしろい話は聞いた事ないなぁ)と内心思いながら耳を傾けていると、『君は?』と、促されたので、わたしもついつい正直に平凡な日々を語った。

 

この日のお酒は美味しかった。

いつもより少し多めに飲んだのに、酔いは浅い。

 

 

『何も持ってない同士だね』

「何にも欲しいモノが無いもんねぇ」

 

彼は 大工の修行を終え、祖国を巡り、大陸を巡ってこの国に辿り着いたそうだ。

『大体の国は見て来たけれど、何処も同じで 何処もそれぞれだったよ』

人間は 何処にでも色んな人が居て、それぞれ独特な文化の中で葛藤して充足しようとしている…ということだ、と 話しを理解した。

 

 話しを聞きながら、頭の中にはソロバンが浮かんでいた。

 

ソロバンでは、「ご破算に願いましては」という掛け声で、それまでの計算の珠の並びをすべてこわして 揃えて、新しい計算に移る。

日本も他所も、政治家も企業家も 世界を横一列に揃え(自分に都合よく)平らにして、和を以って尊しとしよう的な、心にもない甘言レトリックばかりの現在と過去…か。

 

ソロバンの「願いましては~」とは、似て全く非なる「願い」ですね。

 

 

「ソロバンは数を足し引きするだけの道具じゃなくてさ、数字の物語の行間を読むウンヌン…あ、ドイツビール飲んでみっか」

(さすがに、わたし、少し酔って来た かな…。)

 

『ミヒャエルの作戦は良かったし、逃避ツアー参加者には次に手にするチラシの鵜呑みや、ゆるキャラを有り難がらない様に、ちゃんと促してて賢いなと思ったカンヌン…スペインのお酒と言えばサングリアだったね』(彼も少し酔ってるみたい ね)

「ごめいさん!」

 

二人は、酔っ払いながら朝まで喋り 

最後に「わたしは あるば」『僕はアルベリヒ』とお互いの名前を名乗って、

それでも 何故か別れ難く、目についた牛丼屋で満腹になって 解散。

 

 

 

アルベリヒの旅の真似をしようという訳ではない が、

彼に或る人を紹介されたので、いっちょオランダに行ってみようと決めた。

 

ものすごくふつうの人 らしい。 普通 で 凄い…。

 

別に 矛盾 を見に行きたいわけじゃなくて、

 

ふつうの人のすごさを もう一人 見てみたいのだ。目の前の彼と、もう一人。

 

 

オランダから戻ったら、「もう一度会おうよ」とアルベリヒに言った。

 

 

 

 

 

片道 11時間で10万円

お小遣はどうしよう。。 

不安が無いわけないけどさ

自分に勝るとも劣らぬ凡人然とした人に会って なのにスゲー楽しくて、

その人が『すごく面白い』って人紹介してくれたら、そんなの会うしかないじゃん。

 

 

あの日の朝まで いつもの朝だった。

何かが触れた時も 気付かないフリしてた。

だから、毎日トンネルの中みたいで、あの日の夜まで ずっと月も星も見えなかった。

だから、見に行くことにした。

 

世の中の半分が嘘で、半分が夜。それでも、嘘が調味料になるし、暗闇のおかげで星を見つけられるんだ…

なんていうのは平凡極まる台詞だけども、こんな詩だって、明るい朝が来ると思えればこそ、歌える詩になるんだから…

誰も知らない、わたしだけの、二度と無い いつもの朝に出会うために 行こう。

 

 

 

私の名前は あるば。

スペインと日本のハーフ。

Alba には スペイン語で(夜明け)という意味があるらしい。

 

 

アルベリヒ という名前の意味は… 今度会えたら、訊こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

あぷれしお