696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第 25 ぱさいにぃ

『カワでぃーす』

『アントニオどぃーす』

『 難民ブラザースやってまーす 』

アントニオとカワなりの、礼儀正しい返事である。

 

「やったー お二人にはわたしたちが見えるんですねぇ~」

「わたしたち天国シスターズでーす 楽しい旅になりそうですねー よろしくお願いしま~す」

真弥とソルルは、新たに(認識)してもらえたのが嬉しかった。

 

老人2人と 死霊娘2人は挨拶を交わし、ミカエルさんと5人で黒光りするチョイ悪ランクル by トヨタ(アクション映画好きな老人2人のリクエストによる借り物)に乗り込み、意気揚々 というか、遠足にゆく小学生の様な心持ちで出発した。

 

 

厳ついタイヤを静かに鳴らしながら、5人を乗せた最新型のランドクルーザーは当たり前の様に空港の中まで入って行った。

格納庫が並ぶ区画に入り、その中に納まる流線型が美しい小型ジェット機 by ホンダ の横で停車。

「ハイパーソニックではないですが、わたしのカスタムオーダー機なので、安全と乗り心地は保証致します」とミカエル。

マッハ5を表すその言葉の意味を知らない4人はお互いを見つめつつ、『そ…そうでしょうな』『そうでしょうとも!』と、ミカエルの気遣いに感謝して応える難民セブンティーブラザース。

「もし、ミサイルに狙われても 私達は死なずに目的地に降り立てます。」

『無論ですな。心配はしておりません。天は自ら助くる者を助くるるです』

「有難う御座います 然すれば、ミカエルに二言無しと言わせて戴きますする」

 シスターズの2人は、無論 死ぬことはないので黙ってニコニコと頷くだけだった。

 

 

『わしらの大好きなスチュワーデスさんは…』居ないが、皆 自由に快適に勝手気ままにジェットの移動を楽しんだ。

 

 

お昼に離陸して、現地の夕方に 無事着陸。

時差はマイナス6時間。 旅を楽しむ老人には、大禍なく 楽しめるレベルだった。 

 

 

 

内戦の続くンギャリア。

政府軍と支援国家の軍隊が鉄壁の守りを敷いている一帯。

その空港では、悲惨な戦いが嘘の様に思えるほど整然としているが、軍用機や戦闘機も相当数並んでいる。

街も一見平穏ではあるけれど、あらゆる場所で軍や警察による検問が行われてはいた。 

 

閑静なレストラン。

先方は既にウエイティングの様だった。ミカエルは、4人を送ると或る任務の為に去った。

 

老人と この国のVIP の2名ずつ 双方同時に席に着くと、老人たちが先手を取った。

『初めまして ンギャリア難民のアントニオと申します』

『同じく ブラザースのカワと申します』

 

「こんばんは わざわざお越し頂きまして有難う御座います、わたくしはロビーボノジュレのラッキーと申します」居付いた事を気取られず、かわすのが精一杯のVIP達…

『幸運に恵まれた方ですな』とアントニオはウインク。

「初めまして こんばんは。わたくしは連邦平和協議会顧問のジャミールで御座います」

『ほぅ… あなたも良い名前ですなぁジャミールさん』とカワはついアントニオを見た。

「恐縮です。カワさんとアントニオさんのお国では女性名になりますよね」

『ええ… わしらは ジャミラ…と呼びますがね』アントニオの顔色が少し変わるのを見逃さないVIP2人は訝しんだ。

カワがフォローする。 

『失礼ですがラッキーさん、ロビーボンジュールとは何でしょうな』

「おぉ、こちらこそ失礼致しました。あらゆる武器とそのシステムを開発制作する企業であります。ボノジュレー ですがね、ムッシュ。」

『パルドン ムッシュラッキー』カワは丁寧にお辞儀をした。

『ほぉ~ 男のロマンですなぁ~』今度はアントニオが喜色満面でフォローに入った。

『EDなどとは無縁なのですなぁ~英雄、武器を好む ですな』カワも話しに色を付けた。

「あ~ハハ ありがとうございます 今のところは色々と元気ですね」負けじとジャミールも返す。

『EROは人類の活力ですからのぅ まぁわしらは開発に頼らず妄想力で楽しんでおりますがの』

「なんと それは素晴らしいですね さぞお強いのでしょう」ラッキーも思わず参戦した。

『他人と比べはしませんので何とも言えませんが 武器はやや小さ目ですな』

『わしも文字通り 性能 は測れませんが、大きさは大した問題ではない と願いたいですな』

「他人と比べるのはお好きではありませんか」

『比べて楽しかったのは10歳の頃まででしたな』

『まぁ 何が勝ちなのか 何が価値なのか その頃に疑い始めましたからな』

「10歳で早ッ…イヤ失礼。大きさの効果や 性能の向上…いえ、能力という概念のお話でしょうか」

『理屈をこねるのは若者のオナニーと同じく癖になる悦楽のひとつですからな』

『哲学を学んだわけでもないし、何度かオナニーを見つかって処刑されそうになった友人達の話を聞いて宗教への興味も失せましたから… まぁ勘頼りみたいな処から得た想像の知恵…ではなく思い込みの思想でしょうな』

 

 

「今回、ミカエルさんからのご紹介により お会いして戴いたのですが、ミカエルさん曰く、ただあなた方に会ってお話して欲しいという事でしたが…」

『ふむ わしらもそうでしたな。晩御飯を食べて、思いついた事を話して、楽しんでもらえたら…とか 仰っておられたかのぉ』

『あなたたちのお仕事のお話はとても面白いと言われてましたぞ。』

「なるほど… では、一つ質問させて戴きます。カワさんアントニオさん、お二人は わたくし共に伝えたい事がありますか?」

『ありませんな』

『ないですな』

「…では、訊きたい事 というのは如何でしょう。 何か ご質問は…」

『お好きな料理は?』

『お好きな音楽は?』

「オムレツです イタリア風です」

「ロックです レッド・ツェッペリンです」

『やー!トマトと玉子はヤバい組み合わせじゃよな わかるわかる~』

『ぎゃー!レジェンドでたー いいね~』

4人は、お互いの趣味趣向を晒して、お互いにその意外さや理由に驚きながら会話を楽しんだ。

 

 

「さて 先輩お二方からのアドバイスが戴けるとしたら、わたくし共は今後どの様に行動すべきとお考えでしょうか。公私を含めて…」

「そうですね、だいぶお酒も戴きましたし、ラッキー君の言う様、忌憚のないご意見を戴きたいのですが」

『わしらは 誰かに(何かをするべきだ)という考えは持ちませんな。なぁカワっち』

『うむ。あなた方はあなた方の考えに従って、あなたと周りの世界を進めていくのでしょうからな』

「では このままで良いと…」

『良いも悪いもあなたの中にあるものでしょうからな、しかし、あなたに(自分の見えてない世界を知る)という楽しみについてはご紹介させてもらいましょうかの。出会った縁に感謝して』

「はぁ…」

『あなたの信じる、何かや、それを手に入れる為の方法があったとして、その真逆の方法も 同じ願いを叶える能力を等しく備えるものですな。いや、あなた方のライバルさん達の事ではありませんぞ。須らく、あなた自身の事です。』

『あなたが知らずに既に持ち 気付けば直ぐにでも使えるチカラ。あなたが欲しがらなかった、あなただけのチカラです』

『決して売れるものではないのに あなたを豊かにするもの』

『あなた方が求める状況の反対側にある あなた方を守るもの』

『禅問答などではないですよ。あなた方が長年 自身の胸につかえ心にわだかまりを感じていた何かを晴らしたいのであれば、その もの に向かう決心は、超~楽しいだろうとおススメするだけです。』

 

ラッキーとジャミールの横に、彼等には見えない ソルルと真弥が立っていた。

 

『あなた方の方法は 今まで、とても有効に あらゆる人に示唆を与えてきましたなぁ』

『その方法を使って 今までになく、あなた方こそが創り出せる世界を夢見るのは何よりも画期的で面白そうじゃがのぅ』

 

天国シスターズは微笑んで頷く。

 

『今後も、世界の混沌を楽しんでくだされ』

『あなた方なら、ライバルにはまるで見い出せない刺激的で謀略的で神秘的で直接的な真実で事実のゲームが楽しめるでしょうな。法に正悪なし じゃな』

『じゃな』

 

 

 

軍需産業界のトップ と、片や 闇の支配者と囁かれる軍事界の為政者二人は、過去に感じたことが無いほど面映ゆく極まりが悪いのに、何故かとても愉快で 意外にも妙な会心を感じてしまっていた。

ラッキーは思った。

(ミカエルの使いはどんな手を見せて使って、我々を抑えようとしてくるのだろうか と思っていた…

脅しか

裏取引か

抹殺か

首のすげ替えか

懐柔か

金か

。。。それなのに、

 

EDの話しに始まり

オムレツや

ロックの趣味を訊き出され、

嘘にしても何にしても

まるで我々を動かそうとはしない老人が二人

『難民だ』と言った…

にも拘らず、我らに対する物腰の柔らかさもさることながら、全てのしぐさが楽し気にさえ思えた)

 

ジャミールは深く感心し、

(如何に巨大な暴力組織の首脳達でさえ、我々の前では緊張を隠せないものなのに…)

畏敬の念を抱かずには居れなかった。

 

 

上品な食事をムシャムシャ食べ、お酒とジュースをガブガブ飲んで、

4人はそれぞれに握手とフィストバンプをして別れた。

『コレでわしらも死の商人さん方と手を結んだわけじゃな』『じゃな』

「人間は皆 ある意味では死の商人なのでしょうね」「生まれながらに…ですね」

『そうそう 死ぬまでを楽しくする商いで人間社会は動いておりますからな』

『虎穴に入らずんばご馳走を得ず(天国シスターズもお腹いっぱい食べれたかのぅ…)』

 

 

 

この旅の最後に、カワはミカエルに或る頼みごとを一つしていた。

故郷の お墓に参りたいという希望だった。

この国を去る時に、先祖の形見は持ち出したが墓には触れられなかった。

 

ンギャリアにはいくつかの宗教もあり、葬儀の方法も様々。

カワ達は宗教に捉われてはいないが、日本の様に火葬するわけではないので墓を開けて、お骨を持ち出すなどという概念が無い。

だから

どうしても

もう一度…。

 

『彼等には色々好い諺を教えてあげられたんじゃないかのぅ』

『そうじゃの 江戸っ子は宵越しの銭は使わず なんて爆笑しとったしのう』

『エモな心意気のニュアンスが少しでも伝わったのは嬉しいのぅ』

『じゃーそろそろカンバックホームかな』

『そうじゃな。しかしアントニオっち、わしのわがままにちょっと付きおうてくれ』

『ほいさ どこさいくべか?』

『ホームさ…』

 

 

 

墓は 

無くなっていた。

 

 

少し離れた所に

泥まみれの ミカエルが立っていた。

 

 

アントニオは直ぐに全てを理解し、

戦闘で荒れた土地に 妻の眠るその大地に 静かに手を置いた。

 

 

ジャミラ、 会いたかった。 』

 

 

 

 

 

あーるあんにぃ