696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第 29 こっぷくん

その男は 偶然に救われた。

その男が 心に溜めていた気持ちがその偶然を生んだのかも知れない。

奇跡というものは、魂が表した 偶然 なのだろうか。

 

 

(ヴェトナム。

或る男が 或る通りに居る。)

 

 

人ってデタラメだけどさー 宇宙だってそーとーデタラメじゃねーかよぉー

人は自業自得の繰り返し 宇宙は自爆自粛の繰り返し

上品ぶってカッコつけて思い上がるのが物理の起源だぜ

粋がるヤツの寝返りの早さ。。 街ってのは どうにもこうにも宇宙だな

粋がってなくてもオレみたいに裏切るから スターウォーズだな 観たことねーけど。 

 

 

罠だよ罠 乗るなら文句垂れてないで鼻歌でも歌っとけよバーカ

自分の影さえ腹立たしいオレはさいてーのバカだよ

 

 

宗教でも正義感でも何でもねー セコい他力本願弁解開き直り罪滅ぼしじゃねぇか

誰も救えず 全員を不幸に叩き落す 無差別大量殺人じゃねぇか… 

 

ずっとオレを救ってくれて それなのに死にかけてる嫁さんの代わりになれるなら…って

身体に爆弾を巻き付けた。

知らない人達と一緒にぶっ飛んで…  

嗚呼  オレはなんてことを…

こんなの 嫁さんを虐殺するのも同じ事じゃねぇかよ。

 

勝手に見上げたから見えただけで 雲であろうが星であろうが瞬こうが流れようがそんなもんはつかめねーのに。

 

人を憎み 街を恨んだ… すると人間はこうなる。恨みは心を捻じ曲げ腐らせ殺す。

 

列に並べよ 賑やかな人の列に。 そのまま進めば、いつか 人間のまま死ねるんだ。

 

 

 

頭の中真っ白で ホットドックの絶対的な匂いに怒りが渦巻き つい隣に座り込んだ。

ここで ぶっ飛んでやる と決めた。

 

絶対に売れなさそうなカバンや紐をゴミから拾ってきて 売ってるフリをして 機会を待った。

警察か軍人か 高級車が来たらぶっ飛ぼうと待っていた 今まで散々オレ達を虐めたヤツらだ。

 

空腹と疲労で霞む視線の直ぐ目の前の行列が、遠ざかり消え去る様な幻覚をみていた。

もうすぐ消えるオレ… 思い付きの言葉をノートに隠し書きしてカバンの底に貼った 

街のみんなごめんなさい あんたらは、あの世で幸せになってくれ。

 

 

カモフラージュにもならない様な汚いバックが売れた。 

 

売る気は無かったのに何故か2万ドンと隣のホットドッグを手渡してきたから… もう何日もまともなもの食ってなかったから… そういえば買ってくれた人の顔も覚えてないな… 白いクマを持ってた様な。。。

 

その人から「紐もください」と言われて なんとかホットドッグのお礼がしたくて、

以前、知らない男に道を訊かれ、その場所まで連れて行ったお礼に貰った きれいな星のステッカーを売り物になるわけがない紐に貼り付けた。

 

あんなに美味いものは生まれてこのかた食った事がなかった。

 

泣きながら食ってるオレに もう一つくれたホットドッグ屋に何度も何度もお礼を言った。

だから その場所では 死ねなかった。

 

 

トボトボ歩いていると、

煤けた女の子の人形と 緑色の恐竜がやって来た。

オレの家族を救ってくれるという

オレの爆弾を処分してくれるという

 

気付けば オレは 差し伸べられた手を握っていた。 

 

 

オレは オレの嫁さんを病院に連れてってくれた奴らを裏切ることにした。

今までも随分大勢を裏切って来た 

何度穢れたって平気だった

嘘も方便にして意地汚く生きて来た

オレの身体に爆弾を巻き付ける様なヤツラへの借金なんて知るか。。

でも、貰ったホットドッグのお礼はしなきゃいけないな。

 

 

社会とかいう幻想を勝手に信じて頼ろうとしてたから、いろんなものを見逃していたらしい。

この世界に 街も野生も 何の差もねぇ。 ルールは有るが 正義は金持ちのものだ。

 

 

意地悪で貧乏な世界に囲まれて生きて来たお陰で、優しい嫁さんに出会えた。

でも、優しい嫁さんが苦しんでるのを世間のせいにした。

そのオレの最悪の決断を寸でで止めてくれた偶然と優しさ。

なのに別の場所で同じ最悪のことをするつもりでいた。

そこに現れた不思議な救い。。

 

 

今になって ふと思う。

あの時カバンを買って行った人は オレの生みだした願望の幻覚じゃないのか

あの人形や恐竜の救いの提案は オレの心の声だったんじゃないのか

苦しみや喜びや怒りや絶望や救いのループは、偶然ではなく、誰かの奇跡でもなく、

オレの自作自演みたいなものなんじゃないか という 馬鹿げた都合の良い想像。

 

 

 

嫁さんを病院に運んだのはオレだった…。

金が払えない情けなさで、誰かが運んだものだと、己の記憶も色々捻じ曲げる弱虫。

オレの妄想話を聞いた後、彼女は、真実を、渡したホットドッグを見つめながら話してくれた。 

彼女も泣きながらそれを頬張った。

 

 

オレに爆弾を持たせた連中は、妄想の産物ではなかった。

入院費も確かにそいつ等が払ってくれたという事だった。

 

 

そいつ等は 昨日 オレの前に現れた。 

優しい顔だった。

皆 オレを抱きしめて ひとしきり礼を述べて去っていった。

彼等も 人形と恐竜に会ったらしい。

遠い町で だが、家族と仲間に平凡な仕事を与えてくれたそうだ。

 

きっと、それも 彼ら自身が求め 努め 見い出した救いに違いない。

 

彼等はオレに最大の感謝をすると言っていた

オレが彼らを救ったのだそうだ

オレは何もしていない

いや むしろ彼らを裏切った

 

救い。

救いとは何だろう

 

他人を殺さずに済んだ事は 救いなのか?

平凡な仕事にありつけた事は 救いか?

病院に入れる事は?

ホットドッグは?

裏切りは?

優しさは?

 

 

なんだか

とても可笑しな気持ちになってきたぞ。

救いなんてものは どーでもいい

救いなんてものなど存在し無い

救い は感じるもので

救い は決して与えられるものではなくて

感謝の瞬間に現れるだけの 異次元のものなのだろう。

 

救いを約束するものほど恐ろしいものはない

感謝を要求するものほど卑しいものもない

 

意地悪でも 他人を救う人

にべもなく 人に尽くすアホが 誰の中にも潜んでいるのかもしれない

感謝と共に。 

 

  

 

 

 

 

てりまかすい