696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第 33 おうぉん

危機が迫ってる…   直ぐそばに…

 

 

いつもの夢の中で 誰かが呟いた

 

「ジョナイド?。。」

 

怖い様で、少し嬉しい気持ちになるのが不思議だった。

ぼんやりと青白い窓の形を見ながら、ベッドの中のマヤは スーッと息を吸い込み、

 

「ヒィィック シュンッっ!」。。   洟を啜った。

 

 

 

 

(会おう)と日本語で書かれたジョナイドからの手紙がその日のうちに届いた。

 『ヤマグチだよ  シモノセキという駅で…』と。

 

お父さんとお母さんにもジョナイドのご両親から手紙が来ていた。

 

少し不安にもなったけど、いつかジョナイドの為に何かがしたいと願っていたから、ジョナイド一家に会えるのももちろん嬉しいし、それとは別に「いよいよ…」と、不思議な期待が身体に満ちて来た。

 

来月、何かの大きな会議が開かれるという事で、そのお手伝いをするのだそうだ。

色んな国から偉い人達が来て この国の偉い人達が集まって。。みたいな。

あたしの様な子供に何が出来るのかは分からないけれど、お父さんとお母さんはヤル気満々みたいだし、少しでもジョナイド家族のお手伝いが出来る様に頑張ろうと思った。

 

 

これまでずっと、何をすればいいのか分からないまま 両親の優しさに浮かんでる感じの、平和で幸せで 少し申し訳無く感じる毎日だった。

前髪を自分で短くして「お前はだれだぁ?」と鏡に言ってみても変身は出来ないし、当然、誰の役にも立たない。

でも、わざと変なジーパンを自作してみたり、自分の焼いたお好み焼きをTシャツにプリントして着たり、承知の寝ぐせで出かけたくせに 笑われて「せっかく好い夢見たんだから寝ぐせもそのままにしとかないと…」などと意味のない言い訳をし(真弥ちゃんはこんな無精じゃないよな。。)と反省したりしながら、何かをする為の心の準備に励んではいた というか、取り繕っていた。

 

あたしは、真弥ちゃんの事を気にするのは苦じゃない。

むしろ、姉妹みたいに想像を膨らませて勝手に親近感を抱いている。

あたしと真弥ちゃんの関係は第4話を参照してください。

 

自分の今の立場も、きっと意味があるんだろう なんて思ってみたり

いや 意味も価値もなくても この場所にいるんだからそれでいい と考えたり。。

そうしながらも、

いつも 真弥ちゃんの空気を感じている きっとお父さんお母さんもそれを感じている

そして、

お父さんとお母さんの放つ優しい空気も、出来る事なら、真弥ちゃんと二人で分け合いたいと思っている。

 

 

何も持たずにこの国へ来て、沢山のものを与えてもらった。

あたしに出来る事などまだなにも無いけれど、

あたしのする事など誰にも届かないかもしれないけれど、

お父さんとお母さんを守ろう。

ジョナイドの家族を守ろう。

真弥ちゃん あたしにチカラをください。

 

危機が迫っているから。。

危機が直ぐそこにあるなら。。 あたしはみんなを守りたい。みんなの盾でいいから。

真弥ちゃんは、あたしにして欲しい事ないかなぁ。 盾はいらないだろうけど。

 

 

 

田舎町から、電車を乗り継ぎ 新感線に乗り また電車に乗って、ようやく 着いた。 

 

 

わぁ 港の街なんだ。

海の見えるシモノセキ駅に着いた時、なぜだか 身体が宙に浮くほど安心感が湧いた。

風の強い街だけど、何かが守ってくれている様な気配がした。

いや、その強い風さえも、あたしの味方の様に身体を包んだ。

 

 

駅のロータリーに、ジョナイドは居た。

彼の家族も揃っていた。

ジョナイドの家族みんなに抱きしめられて泣きそうになったから笑って誤魔化した。

お父さんとお母さんもみんなとハグしていて、抱きしめられていたジョナイドもはにかんでいた。

「元気だった?」ジョナイドにはそれしか言えなかったけど、彼も『ああ』とだけ答えて照れ笑いしてくれた。

 

 

もう一組、知らないご夫婦と挨拶を交わす大人達。

韓国から来た人たちで、あたし達と一緒のチームでお仕事するらしい。

 

 

駅から徒歩数分で会場に着いた。

 

あたし達の仕事… は、

 

お う え ん?  応援?!…   誰の??。。

 

 

 

具体的 な指示は何も無く、

この街に来て、

この会場に居て、

多くの人達と一緒に話しを聴き、 

素直に、全てを、

感じる事。。 

 

うん、全然わかんなかったけど、

静まり返った会場で、

時折り聞こえるオナラ(たぶんジョナイドの…)には、懐かしさを感じてしまった。

あたしとジョナイドのオナラに関するエピソードは第3話を参照ください。

 

 

 

お父さんとお母さん そして、韓国から来たご夫婦には こんな手紙が届いたそうだ。

 

「ご無沙汰しております ミカエルです(中略)

以前お話しさせて戴いた様に(中略)

異次元の娘さんからのメールには とても驚かれたでしょうね(中略)

今回もまた 真弥さんとソルルさんはとても大切な役割を担っておられます(中略)

是非 ご両親の応援をお願いしたく。。。」ま、だいたいのイメージだけど…。

 

ジョナイドの家族も、真弥ちゃんとソルルさんの応援に… そして何より、あたしへの応援も必要だという考えで来てくれたのだと、ミカエルさんに聞いた。

 

 

真弥ちゃんとソルルさんは 応援部隊の計画を聞いた時、ミカエルさんに飛びつかんばかりの喜び様だった というか、実際には ミカエルをサンドウィッチにしたらしい。

 

『二人は 自分を認識できない家族の皆に向かって深くお辞儀をし、ニコッと笑って アスリートの様に拳で胸をポンポンと叩き、会場に赴いたんだよ』とミカエルさんは言い添えた。

 

ミカエルさんには何故二人が見えるのかと訊いたが、「 君にもいつかきっと見えるよ」と優しく意地悪に応えてくれただけだった。

 

 

 

講演が始まり、話しを聴きながらも 何かを察知しようと 目を閉じたりキョロつかせたりしているうちに、会場の空気が変わっていくのを感じた。

(見えない二人)は 会場の人々を護るために、歌を歌うのだそうだ。

あたしも 歌う2人を想像して胸がいっぱいになったから、手を胸に当てて祈った。

応援部隊の皆と一緒に祈った。

 

応援し 応援される…  応援のチカラってなんだろう。。

見守り 見守られる…  祈りの心がもたらすもの。。

 

「真弥ちゃん ソルルさん 頑張ってね ずっと応援してるから いつか 会おうね」そんな事を想いながら心を解き放った。

 

お父さん お母さん ジョナイド ジョナイドのおじさん おばさん おじいちゃん おばあちゃん おねえさん 有り難う

 

ミカエルさん 会場の皆さん 有り難うございます

 

…さっきから感謝しか出来てないな。

 

でも、まぁ 感謝ばっかりってのも、それはそれで有り難いことで、嬉しいことで…

だから、嬉しいことばっかり… か。。 

 

 

あ!

あの夢が告げていた『危機』は、 ただの 聞き違い の 危機違い で、 

 『嬉々』だったのかもしれない…。

 

 

今まで 誰かの役に立ててない… と 自分を情けなく思ったりしてたけど、

それじゃぁ余りにもエゴイスティックだよね。

有り難さ 嬉しさを卑下するなんて そんな恩知らずな事は無いな。。

 

そんな感覚こそ、

危機だよ。

 

 

 

 

講演会は 無事 幕を閉じた。

 

あたしに何が出来たのか そんな事は考えない様にした。

ジョナイドのオナラの様に 全ては何かの役に立つのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 ゆつける