696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第 37 グァルディアンデルティソロ

「神様ってのは 居る

でも、それはみんなの知っているものではない…。」

 

 

アレックスは旅立った。とても 勇敢に。

わたしの目の前で終わらせ、始めた…のだろう。

静かに 安らかに息を引き取って、異次元に向かった。 直ぐそこにある、見えない所。

医師と看護師はもちろん何も気づいていない。

友達だというわたしに、お悔やみの姿勢をとるだけだ。

わたしは、何というか、呆然とするだけだった。

アレックスの亡骸を見つめて、悲しみも出来ず、何も分からず、なのに、涙は流れていた。

アレックスの頬も、濡れていた。

 

身寄りの無いアレックスは、病院に移され、死亡を確認され、埋葬される。

 

『いってらっしゃい。』

 

(…わたしは、日本へ 帰ろう。)

 

 

 

 

 

アルベリヒは、あるばからの連絡でアレックスの死を知った。

(アイツは… 間もなく生まれるのかなぁ アチラの次元に…)

 

あるばは、元気に帰って来た。

(僕は何も出来なかった…)けれど、彼女の穏やかな笑顔を見て心から安心した。

 

(アレックス お前 上手くやった様だな。)

 

 

アルベリヒは、あるばとの再会に、明るく開放的な店を選んだ。

今まで行ったことの無い様な洒落た処で、少し気恥ずかしかった。

女性と待ち合わせ、エスコートするなんてのは、経験も無く苦手に思えた。

 

「神様ってのは 居る

でも、それはみんなの知っているものではない。」

 

アルベリヒは、リラックスしたあるばの自然さに安堵し、この度の大変な旅仕事への感謝を胸に、アレックスのこれまでの戦いを思い描きながら話し始めた。

 

「人間は、神さえも都合よくお飾りにする。

神様を偽造し 捏造して、商売道具にしてしまう。

それに比べれば、悪徳芸能プロダクションなんてカワイイものかもしれないね。

アイドルと呼ばれる神は、お布施は取るが 命は取らない。

大衆は、マフィアも舌を巻いて逃げるくらいの非道に ”神様” や ”正義” を加担させる。

 

…少し、熱くなりすぎたかな。」

 

 

「あるば、今回の君の、ささやかで 個人的な行いこそ、神の仕業だよ。

 

僕は神様というものを個人的な支えの様に捉えている。

宗教的な意味ではなく、ここ 日本の八百万の神々を祀る文化に近いけれど、それは、人それぞれなる個々の魂に宿り、個人を導くものとして、尊べば良いと思う。

例えどんな神があったとしても、

人間の纏まった集団になると、その中から、その数の力を利用しようとする誰かの煩悩が暴走し始める。

始まりの一つには、正義の為にという欲求からの 都合上の教義解釈が有るかもしれないけれど、自然というものの力は 必ずバランスを取ろうとするから、そこには、カウンターな動きが生まれる。いわゆる、もう一つの正義。別名、悪の施し。」

 

 

『いわゆる、リーダー誕生って訳ね。指導者・主導者の乱立。権力者・先導者、大衆を纏め・操り・管理しようとする偉~い人達。ルールを作ろうとする真面目~な人々…かな。』

 

 

「社会はルールで成り立つ。

そのルールは、破られる事で存在する。どちらが正しいかなんてのは 日々入れ替わる。

 

個のものには、個と個の二人の世界には、ルールは要らない。

”信頼” はルールではない。

欲求 や 施し でもない。」

 

「友情や恋愛は、欲求や施しの気持ちから始まるのかもしれないが、人間関係というものは、何も、友情や恋愛の様な絆を結ぶ必要は無いだろう?

 

相手を大切に思うなら、約束や礼儀よりも 一緒に居て 話せばいい。

相手を尊重出来ないなら、静かに 離れればいい。

僕は そう思うんだ。

 

あるば、君とは一緒に居ようと思う。

 

アレックスの友人として、君に感謝している。

だから、僕は 君を守ることにした。」

 

 

 

『あなたは、そういう人だったわね。アルベリヒ。

わたしには分かる。

決して、口説かれているんじゃないって事もね。

あなたは、わたしの恋人に成りたい訳じゃなくて、そうね、守護神に成ってくれるのよね。素敵な神様ね…』

 

『いつか、わたしに恋人が出来て 家庭が出来て 子供が生まれ 年を取ってお祖母ちゃんになっても、何処からか見えない盾で守り賜うのよね。

あなたは、きっと そういう人なんでしょうね。』

 

 

 

「僕は何も特別ではないよ。

大切な人には、誰もが 今後の僕の様にするだろうさ。

奪いもせず 与えもしない…

ただ、守るだけ。

例え相手には気付かれなくても、他人が認めてくれなくても、

僕はそんな生き方をカッコイイと思うのさ。 

僕はアレックスに導かれて、自分を信じる事が出来ている。

そして、あるば、君も僕を導いてくれた。

 

いつか

僕に恋人が出来 家庭が出来 子供を授かっても、君達が教えてくれた事を忘れなければ、きっと平凡で素晴らしい日々を送れると、信じる。」

 

 

 

 

『そうね、きっと。

 

愛情って、きっと そういうものね。

 

アルベリヒ、あなたに会えて、本当に良かった。

 

アレックスも、今度は3人で会おう、って言ってたわ。』

 

 

「うん、僕も君に会えた事に感謝しているよ あるば。

アレックスとも また会えるね きっと。」

 

 

 

 

 夜になり 外に置かれたテーブル席からは、小さな星々の瞬きが見えた。

 

 

『ところで、アルベリヒ わたしたち、明日も会えないかしら。

(前に会った時と同じ…何故か、このままこうして居たい。だから、これから牛丼屋に行くよりも…)

…そうね、あなたの下手な歌を聴かせて欲しいし、もっと話がしたいし、あなたの名前の意味も まだ訊けてないもん。』

 

「えっ アレックスにも⁉ 君にはもぅヤツから…」

 

『ふぅ…(牛丼以上の鈍感ね)。 いえ、わたしにも まだアレックスからは何も届いてないわよ。

アルベリヒ、…恋愛は 欲求から始まるとかどうとかって、あなた言ってたじゃない。

神とかルールについては自分で考えなきゃいけない。でも、概念的に相手を大切に思い始めるってのと、恋するって事の差を、冷静に分析なんてしたくないわ。

わたしも、素敵な神様になれるかもしれないし…』

 

 

 

「そうだね…(君は、僕の…) そうしよう。 僕の歌は酷いもんだから、期待しておいてね。

僕の名前の意味は、明日 教えるよ。(僕が、君の…)

君を守ると決めたからね。(宝物は、自分で守るものだから。)

 

じゃあ、また明日。」

 

 

 

『うん、明日ね。

 

ありがとう。』

 

 

 

 

 

シャッツウェヒター。