696キキキキ

696クロウサが綴る 696の世界

第39 de rip

超自滅の会

 

c6gwの防御力が唯一通じない相手…

そんなものが現れるであろう事も、クスリのリスク的矛盾の標準化だろうか。

 

人間の存在意義を、自然との調和のみに集約させる極端な叙情否定思想で、世界中の宗教をも凌ぐ求心力を持ち始めたムーヴメントは、あっと驚くその極論で多くの人々の目を眩ませて心酔させた。

「人間の感情など、自然への悪害にしかならず、その悪が 許容範囲を超えたから 有志は自らを滅して 地球を救おう。」と、いう事らしい。

 

 

世界各地で その多くは先進国に於いて 笑顔での自殺 が、横行し始めていた。

 

 

自らを滅する事で、人類にも 他の生態系へも主体的に貢献してゆくという、一見、究極の利他なる献身的スタンス。

しかし、その実 ほとんどの者は自分を虚しくし、責任を全うする有意義さを捨てる事を ” 自主的で有意義な決意 ” という風に思い込む事で、己の想いを消そうとした 新しい自殺。自分の肉体よりも、心を殺そうとする(真っ白な観念)への憧れ。

今までの(他人の行動を見つめるだけの逃避行動)が、流行の興奮も助けて、異常にエスカレートしようとしていたのだった。

 

その流れに乗って創られた或る団体は、希望者の身体を集め、生体エネルギーを抽出し、他の人間や生き物の生活に使う(養殖場の如き)科学的システムを作り出した。

別の団体は、「滅する」という行為に重きを置く考えから、宇宙空間や他の惑星に己の肉体を葬る道を開発している。

 

当然、

そんな行為は法で許されないが、

自殺の抑止力としては、法のチカラだけでは いささか役立たずだろう。

思考と 思想を 根本から見直させるのはルールではなく、心と 想い の為す行動だろうから。

自分を守ろうとしない人を、他人が守り続けるのは極めて難しい。

他人の考えを捻じ曲げても、その日の見た目が変わるだけで、気付きが無ければ、いつしかそれぞれの想いに立ち返ってしまう。

加えて、今回の痛ましい流行の兆しにみる人々の行為には 絶望や 逃避の意識が極めて希薄に無視されているので、言葉や映像や音など既存の伝達方法で気付きを促すのも意味を生さない。 

 

 

ミカエルもあるばもアルベリヒもデラバン達も、この会の妄信的猛進に歯止めを効かせられないでいた。

天国シスターズの歌も万能薬にはならず、ソルルも真弥も、身を投げる人々のニュースに焦燥するばかりだった。

死にゆく人々は、悲しみや自虐で自死するわけではなく、思い込みの責任感や勇気や あるものは恍惚感と共に行動するので、「幸せになろう」と歌うシスターズの歌は、抑止力にはならない。彼女達の歌の意味が、詩の意志が、理解できる者は自殺など選ばない。

 

 

命の意義に 想いの真価に 気付いた者達は、生きて 生かそうとする。

自分の気付きを 活かそうとする。

 

気付きとは何だ?

学びや懐かしさや思い出が育む価値観の根幹だろうか。

それとも、言い訳や誤魔化しや妄想が生んだサバイバル能力 もしくは自決資格…。

 

 

 

キヨシはコンビニで働いている。

彼の仕事っぷりは、あたかも神に仕える使徒の様に、淡々と黙々と粛々と忠実に、あるべき姿で為すべき仕事をやるべき以上の真摯さで取り組むものだった。

そのコンビニは、以前 キヨシが、工場勤務していた時に利用していたお店で、

そこのオーナーに「是非」と乞われて転職し、半年経った今では店長になっていた。

 

小学生の娘は学校が終わると、キヨシの仕事が終わるまでコンビニの従業員室で勉強をしている。

コンビニのオーナーに貰ったiPodのイヤホンを耳に挿して、少しサイズの大きい靴を履いて、左右に積んだ参考書に挟まれて集中している。

少女の将来の夢は、『お好み焼き屋さん』。

 

ミカエル達は、このコンビニの常連になっている。

オーナー夫妻とも気軽に挨拶を交わす様になっていた。

この夫婦も良く働く人達で、聞けば、潰れそうな時に偶然再会した、昔 この店の担当になっていた本部のサポート営業マンだった男が、数日間 親身になって指導してくれたお陰で立て直す事が出来たので、以来「真剣に経営に取り組んでいる」という事だった。

キヨシを雇う様に勧めたのも、その元営業マン。

オーナー夫妻に、「工場でとても勤勉に働く人が居るらしいので、是非その評判の良い人を誘ってお店を盛り上げましょう」と言ったという。

 

 

羽根の折れかかっている、天国シスターズ も、何か出来ないかとミカエル達に付いて回る日々だった。

失意の天使達を、優しいアントニオやカワは宥めてくれるし、ミカエルも気遣ってお菓子やアイスを手渡してくれるが、明るい二人も今回ばかりは不甲斐なくて凹みつつ、奥の部屋で黙々とペンを走らせる少女を影ながら応援する事しか出来なかった。

応援の歌を作って、二人で静かに口ずさむシスターズだったが、そうしていると、逆に自分達が少女に勇気づけられている様に感じてしまい、何とも言えない気持ちに陥る有り様だった。

でも、やはり 誰かを応援出来るのは幸せな事なので、今日も ここで歌っていた。 

 

そうして、歌の休憩中、いつもの様に少女の横でお菓子をカジっていた二人の天使は、不意に優しい声を聞いた。

辺りを見回していると、ぼんやりと やがてクッキリと、何処かで会った様な気のする女性が現れ、とても気さくな喋り方で二人に話しかけてきた。

「いつも うちの子の応援をしてくれてありがとうね」

戸惑うシスターズは、呆けた顔で頷いた。

「私は この子の母親なのよ。そして、実は あなた達を迎えに来たの。私と一緒に来てくれるかしら。とても大切な仕事が有って、あなた達に手伝って欲しいのよ。」

少女の母らしく、とてもキュートな印象の女性だった。

 

シスターズは顔を見合わせて、お互いの手を握りしめて、「ハイ!」と応えた。

 

すると、

キヨシの亡き妻は、ニッコリとほほ笑み

 

その笑顔の後ろから、

アントニオの亡き妻 ジャミラが、温和なクレオパトラ…の様に現れ

 

より一層、シスターズの瞳を釘付けにして、二人の口をポカーンとさせたのは、

何故か片手にオレンジジュース もう片方の手には柿ピーを持って、下手くそなお辞儀をする、服装のダサい、まだ少し影の薄い、ウルトラスーパーオトコマエ…

 

アレックスだった。

 

 

 

 

 

punker